スキーのデモンストレーターを経て、今はアドバイザリースタッフとして店頭でお客さまへアドバイスをしたり、シーズン中にはスキー場でインストラクターをしています。言うなればスキーの楽しさを仲間やお客さまと共感し合い、道具選びから技術までをサポートすることが僕の仕事です。
コロナの影響はもちろんですが、暖冬だったこともあり昨シーズンは少々寂しいシーズンでした。同じ思いでいるスキーヤーの方もたくさんいらっしゃると思います。でも、今年は雪がしっかりと降りそうですのでとても楽しみです。ぜひ、たくさんの人にスキーを楽しんでもらいたいです。
私自身は、もの心がつく前からスキーを始めていた、という感じでした。アマチュアとしていろいろな大会に出ていた父親の影響です。冬休みになると父の後輩がインストラクターをしていた長野のスキースクールに入って、もうスキー三昧の日々でした。休みの間、毎日のように新雪のパウダースノーを楽しむという、なかなかできない幸せなスキーライフのスタートを切らせてもらいました。
そのインストラクターの方は今でも私の師匠というか、恩人でもあります。
中学、高校になるとアルペンの大会に出るようになりましたが、レースよりもデモンストレーターになることが夢になってきました。もともと僕の父親もコンペティションと言うよりも家族で楽しむ、と言う感じで教えてくれていたこともあると思います。
スキーのデモンストレーターというのは、インストラクターのメソッドを決める役割を持つ、いわば「インストラクターのインストラクター」です。私が所属していた日本プロスキー教師協会(SIA)は国際スキー教師連盟に加盟する日本で唯一の団体で、デモンストレーターとして認められるのは日本全国で15名程度、というとても狭き門です。
デモンストレーターになると、国内はもちろん海外に行ってスキーの指導をするだけでなく。大会の運営のノウハウの提供など、スキー文化の啓蒙も担うことになります。中国や韓国などにも出かけました。
18歳でデモンストレーターを目指し始めて、初めて認定を受けたのは25歳の時です。毎日スキー場でインストラクターをやった後にトレーニングをしました。自分が滑る様子をビデオに撮ってもらい、ガイドライン通りに滑れているのかシルエットをチェックし、またやり直すことを繰り返します。かなり真剣にやっていたので、認定されたときは本当に嬉しかったです。
実は途中、気持ちがスキーから離れてしまったこともあるのですが、そんな時に支えてくれたのも小学校の時からずっと僕をみてくれていたスキースクールのインストラクターだった方です。その方自身もデモンストレーターの資格をお持ちでした。今でも頭が上がりません。スキーをやっていて得たものは多くありますが、こうした先輩に恵まれたこともとても大きいです。
スキーはゴルフと並んで生涯スポーツと言われていますが、ゴルフと違うのはハンディキャップなど関係なしに、同じゲレンデでおじいさんやおばあさんも、お孫さんと一緒に全く対等に楽しめるところなのではないかと思います。その先に自然に包まれるワクワク感があるのですから、本当に最高ですよね。
一時期に比べるとスキー人口は減っていると言われていますが、最近は幼稚園くらいのお子さんを連れたファミリーが増えてきていて、とても嬉しいです。スキー場もいろいろと工夫を凝らしていて、託児所があったり、とても快適におしゃれに楽しめる場所になっていますので、ぜひ試して欲しいですね。
そうそう、初めての方は是非、最初にスクールに入ってもらうといいと思います。親が一生懸命に教えるよりも、その方が子どもたちも絶対に早く上達できますから。信じてください。
また地域によって違った魅力がある点にも注目してほしいです。たとえば白馬は海外の方が経営している飲食店も多くあって、僕が感じる印象としてはなんだかカナダの街のような感じです。一方、長野の野澤は温泉もあって、温泉卵を頬ばったり、ザ・日本!のスキー場の情緒があります。北海道は、もうとにかく大自然!パウダースノーを思う存分楽しめます。
スキーの魅力は本当に人それぞれだと思いますが、僕自身はといえば、リフトを降りて、ちょっと離れた場所まで行った時、音のない世界で眺める雪景色が最高に好きです。雪が降る音、足下で軋む雪の音。最高です。
まだ小さいのですが二人のこどもと妻と一緒にスキーを楽しんでいます。滑り終わってみんなで暖炉の前にいるときには、本当に幸せだな、と感じます。
あ、そうそう。妻もヒマラヤでスキー商品を担当していて、その縁で知り合ったんです。
スキーからの一番の贈りものかもしれません。