高三の夏、PK戦。最後のキッカーとなった夜、母親に初めて言えたお礼。サッカーは今もそばにある。

2020.09.28

サッカーは、プレイする人、観る人、とてつもない数のファンがいるわけで、その楽しみ方や魅力を語るとなると人それぞれだと思うんです。つまり、とてつもない数の魅力、楽しみ方、上達の仕方があるのがサッカーです。
ですので、僕が語れることは、サッカーとの関わりの中で自分がサッカーからもらった贈りもの、みたいなことになります。

サッカーを始めたのは小学生の低学年の時。友達に誘われました。今思い返すと恥ずかしいんですが、体が小さかった僕は、とにかく負けず嫌いでいろんなことに肩肘張ってきました。サッカーも、兄が野球をやっていたので違うことをやってみたい、という思いがあったんです。
体は小さかったものの、足が速かったので仲間よりも早くレギュラーとして先輩達の試合にも出られるようになりました。それだけで、もう気分がいいわけです。サッカーはご存知のとおり足が速い、背が高い、体がでかくて強い、あるいは精神面がタフだったりなど、それぞれの個性を活かしたポジションがあって活躍できるスポーツです。そうしたことも僕には向いていたのだと思います。


中学へ入ってもサッカーを続けましたが、決して強いチームでもなく、高校に入学したときにはもうサッカーはいいかな、なんて気持ちになっていました。まだ身長も低くて、自分が高校のサッカー部で通用するとは思っていなかったのもあります。
ところが同じ高校に、隣の中学でキャプテンをやっていた奴がいて、そいつが「いっしょにやらんか」と誘ってくれたんです。そのチームは地元では強豪で、僕のことを覚えてくれていたのが嬉しかったのですが、最初はちょっとハスに構えて「俺はもうやらん」なんて言って断りました。でも熱心に誘ってくれたので、仮入部にしぶしぶついていくという感じで参加。結局そのまま一緒に入部することになりました。
すると、やっぱり足の速さを買われて、ほどなくトップチームに上がれたんです。誘ってくれた友人よりも早くに!・・・ちょっといやらしいんですけど・・・うれしかったです。そいつもすごく上手いんですよ。下のチームにいるときにはキャプテンシーもある、すごくいいプレイをします。ところが、トップチームに上がると人が変わったようにプレイにキレがなくなり、ミスもしてしまうんです。真面目、なんですかね、硬くなってしまうようでした。

結局、彼も三年になるとトップチームのレギュラーになり、キャプテンになりました。
そうして迎えた高校最後の大会。ベスト16をかけた戦いは、監督が接戦を予想し、それまでやったことのないPK戦の練習を事前にやって臨みました。試合は予想通りPK戦に。僕は、4番目のキッカー。前の晩に「左下隅に蹴る」と決めていました。その場で迷って悪い結果になると悔いが残るじゃないですか。だから、決めていたんです。ところが、PK戦が始まると、僕の前の3人が揃って左に蹴ったんです。ちょっと迷いましたが、思い切って、左下隅へ。ボールはキーパーに弾かれて、枠を逸れました。あぁ、と思った瞬間に試合終了のホイッスルが。緊張していて、僕が外せば終わり、って認識をしていなかったんです。頭の中が真っ白になりました。その後のことはよく覚えていません。
カッコつけたがりの僕は、親にはいつも試合を観に来るなと言っていたのですが、帰ると試合の結果を母親は知っていました。足の速さが売りの僕にとってスパイクへのこだわりは人一倍大きく、何足も試し、カンガルー皮の当時でも一番高かったものを1〜2ヶ月に一足履き潰していました。母親は、なにもいわずに毎回シューズを用意してくれていたんです。その晩、初めて母親に「いままで、ありがとう」とお礼が言えました。すると「サッカーを続けてくれて、ありがとう」と言ってくれました。また、泣けました。

高校のサッカー部に誘ってくれた彼は今でも故郷でサッカーをやっていて、大親友であり、僕をサッカーに引き留め続けてくれた恩人です。彼のおかげでサッカーは今も僕のそばにあり、サッカーをやっていたおかげで、ヒマラヤに入社したてで出たサッカー大会でMVPをいただき、ワールドカップの公式ボールを賞品としてもらいました。これも宝物の一つです。

そうそう、初めてのチームでつけた練習用の背番号56は、ずっとボクのラッキーナンバーです。この数字にまつわる不思議な縁も色々とあるのですが、もともと56を選んだのは、下級生でレギュラー番号がもらえない中で、どうせだったら一番でかい番号をつけよう、と思ったからです。なんだか、それも恥ずかしい理由ですよね。自分らしいな、って思います。

今はチームには入っていないのですが、なにかの拍子に「サッカーやろうぜ」と声をかけてもらったときにいいプレイを見せたいじゃないですか。だから車にはサッカーボールとスパイクが積んであり、時間を見つけて空き地や駐車場の隅っこでコソ練しています。
肩肘張った、負けず嫌い。そんな僕に、サッカーはいつも寄り添ってくれています。

教えてくれたひと:岡島 力也さん株式会社ヒマラヤ 商品部

サッカーの得意技は、くるっと回ってサッとかわすフェイント! フィールドの外ではしょっちゅう壁にぶつかる真面目(?)なタイプ。