自分の息づかい、枯れ葉を踏む音。さあ走ろう。
トレイルランニングの魅力。

2020.07.20

トレイルランニングは、山や渓谷を走るスポーツです。マラソンなどのいわゆるロードランニングに比べて知っている、あるいはトライしているランナーはまだまだ少ないですよね。でも、ここ数年、東海地区だけでも、年に5つくらいのペースで大会が増えています。
世界規模で言うとヨーロッパや北米で盛んですね。今の世界チャンピオンはスペインの選手で、スペインでもとても人気のスポーツです。ちょっと意外ですか?自然を相手にしたスポーツなので、大会ごとに距離や条件は異なってきます。例えばヨーロッパは急峻な山が多く、アメリカではなだらかな山が多い。そんな自然環境と深くつながったスポーツなんです。
日本ではウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)というレースがロングレースの草分けと言われ、2012年に始まりました。富士山麓、林道など総距離約170kmを制限時間46時間内に走り、歩きます。トップ選手は24時間を切るタイムで走り切ります。すごいでしょ?

でも、僕自身が感じるトレイルランニングの魅力は、他のスポーツとちょっと違っていて、速さを競うことではないところにあると思っています。
山道を踏む自分の足音、鼓動、風の音、木々の枝が触れる音、そして山を流れる空気。その中を走っていくとふっと不思議な感覚に包まれることがあります。アメリカには高名な哲学者のランナーもいるそうですが、その感覚、わかります。そんな、ただ走るだけではない魅力が、トレイルランニングにはあるんです。
一方、自然と深く関わっていくスポーツなので、ある意味自己責任をしっかりと持つことも求められます。時には路面に足を取られたりして怪我をすることもありますし、蜂や猪などと遭遇することもあります。そうした時のためにエイドキットを用意しておくことも必要です。猪が出る季節には、鈴をつけてシャンシャン音をさせながら走るんですよ。
それと同時にゴミを出さない、自然を壊さない、ハイカーさん優先、山で出会った人には挨拶しよう、などのルールもあります。そうした、自分を律しながら自然の素晴らしさを感じて走る、ということも魅力なのかもしれません。こうした共通した思いがあるからか、トレイルランナーはお互いをリスペクトしてサポートし合う文化が強い気がします。
僕もトレイルランニングを通じてたくさんの仲間と出会うことができました。愛用しているランニング用のサンダル=ワラーチというんですが、これも仲間がカスタムで作ってくれました。シューズに比べて集中して走ることが必要で、着地の時に足裏まで神経が研ぎ澄まされる感じです。人間が持っている機能をつかいまくる、っていう感じですかね。

ちょっと難しいことを言いましたが、とは言え、所詮は遊びじゃないですか。いかに山と自然を楽しむか、ということです。だから、少しでも興味がある方はあまり気負わずに始めてみるのがいいと思います。まずは山を歩くことから始めてもいいですし、疲れたら歩けばいいんですから。実際、全く走ったこともないけれど興味がある、という女性のお客さまの相談をいろいろと受けた結果、今ではたくさんの仲間を作って走っていらっしゃいますよ。

トレイルランニングを楽しむのに年齢、性別、走力は関係ないと思いますし、自然に対する気付きや、自分自身の世界が広がる感じを多くの人に知ってもらいたいと願っています。

ここ岐阜は金華山はもちろんですが、里山がたくさんあって、本当に恵まれた環境です。日本は自然に恵まれた国ですから、お金を使うだけでなく、目の前にある自然に目を向けるだけでこんなに贅沢なスポーツができるんだ、と思っていただけると思います。そう言う意味ではトレイルランニングは、とっても「お得なスポーツ」でもあるんですよ。

教えてくれたひと:古川 岳人さん株式会社ヒマラヤ モレラ岐阜店

学生時代から数えると距離も時間もたくさん走っていて、筋トレせずともカラダはいつでも出来上がってます。