金華山を遠くに近くに眺めています。
山は登らなくても、なにかを与えてくれると信じて。

2020.05.18

今までたくさんの山に登ってきました。2ヶ月ほど前にはヒマラヤ街道も行ってきました。
標高が高いからからこそ見ることができる景色ももちろん魅力的ですが、普段の生活からそう遠くない場所にも、四季折々の自然を存分に堪能できる山が日本にはたくさんあります。

僕たちヒマラヤの本拠地ともいえる岐阜市内には金華山(きんかざん)があります。昨年オープンした本社最上階のライブラリーからも見ることができますよ。

標高は329m。頂上には難攻不落の城として知られた岐阜城があります。そう、織田信長の居城でもあった城ですね。金華山の麓では、伝統的な鵜飼い漁がおこなわれていたり、ちょっとした観光スポットにもなっています。

僕にとっての金華山は生活の中にある山、というか、子供が小さい頃は一緒に毎週のように登っていました。登山コースが10もあって、初心者向けから岩場を攻める登山道まで、レベルや気分、あるいは季節によっていろいろな楽しみ方ができます。そのうちの数本は、戦国時代に城へ向かうための登城路の跡を整備したものもあり、かつては斎藤道三や織田信長、その他の武将たちが息を切らしながら同じ道を登ったのかもしれない、なんてことを考えながら歩くのも金華山ならではの楽しみかもしれませんね。

ポピュラーなルートの一つ『瞑想の小径』は、子供たちが遠足でも登るくらいの挑戦しやすい、北側の斜面を登るコースです。前半はツブラジイやアラカシの樹々の間を森林浴を楽しむような感覚で進み、その後に続く岩場でちょっとした登山気分も味わえます。瞑想の小径から分岐して北西側の尾根を進む『馬ノ瀬登山道』は、頂上に向かって岩場をまっすぐに登っていく上級者向けのコースです。とはいえ、足掛かりが豊富にあるので熟練者はスイスイと登っていきます。また、南東の尾根を登る『東坂ハイキングコース』からは圧倒されるような岩壁を望むことができます。金華山はチャートという硬い岩石でできているので、優しい顔をしていると思うと突然厳し顔ものぞかせる、本当に何度登っても飽きない山です。

それに、季節による変化もとても魅力的なんです。春は新緑はもちろん、夏にさしかかろうとする今の季節、金華山は金色に染まります。ツブラジイという花が一斉に咲いているんですね。金華山という名前の由来はここからきています。見られるのは5月の数週間ほどで、本来であれば毎年楽しみなシーズンです。

今はこうした時期なので、登山は我慢です。あまり偉そうなことを言うつもりもないのですが、山を登るのは、多くの人の支えがあってのことだと普段から肝に銘じているつもりでした。金華山に関してだけでも、先ほど紹介した登山道の整備や自然保護に多くの人が関わっています。他の山でももちろんそうです。山に登っている時には、人に会うと挨拶をしますよね。それは、何かあった時に命を支え合う仲間になることもあるから、なんです。そんな思いが、この時期、また違った意味で自分の中で大切なものになっています。だからこそ、他者へも思いを馳せて、今は我慢、と。

登れない今だからこそ、自然のありがたさ、健康であることの素晴らしさも改めて感じています。山はすごい。登っていない時でもいろいろなことを教えてくれる、なんて、です。

今は遠くから金華山を眺めて、また仲間たちや家族と山道を踏むことを楽しみにしています。金華山もそんな僕らを待ってくれているのかなあ。いやいや、もしかすると、人間がこなくて静かでいいなあ、なんて思っているんじゃないかなあ、なんて想像しながら楽しむことにしています。

教えてくれたひと:内山 一之さん株式会社ヒマラヤ 経営企画室

山でも良く眠れるように、普段から寝る時は畳の上に寝袋。