427 Sports Advocators' Library Collectionなぜパタゴニアは唯一無二のブランドになりえたのか。独自の経営哲学が凝縮された、喜びと楽しさに溢れた写真集。Unexpected 30 Years Of Patagonia Catalog Photography

2020.04.16

タイトル:Unexpected 30 Years Of Patagonia Catalog Photography
出版社:パタゴニア・ブックス

アウトドアブランドの中でも「パタゴニア」は独自のポリシーを持った企業として知られています。創業の初期に売上の大半を稼いでいたピトン(クライミングの際、岩に打ち込む金属製のクサビ)の販売を、岩を傷つけることが結果として自然に害を与える行為だと考えて中止したり、「1% for the Planet(売上金の1%を環境保護団体に寄付する慈善活動)」を1985年から継続したりと、常に環境を大事にする姿勢が貫かれ、自社の利益を最優先にしない「パタゴニア」の一貫した哲学に惹かれてブランドを支持するファンも多いのではないでしょうか。彼らの思想をさらに知りたい方は、創業者のイヴォン・シュイナードによる経営哲学をまとめた本「社員をサーフィンに行かせよう」をぜひ読んでみてください。

「パタゴニア」が自社の製品を販売するツールとして力をいれていたのが、商品カタログです。このカタログを使った通信販売はビジネスの主要な柱の1本となり、企業の成長を支えてきました。この「Unexpected 30 Years Of Patagonia Catalog Photography」は、「パタゴニア」が過去30年で作ってきたカタログに掲載されていた写真をまとめた本です。

カタログには毎回、多くのイメージ写真が掲載されています。一般的な商品カタログは、製品をより良く、より機能的にショーアップすることが多い中、「パタゴニア」は全く違ったアプローチの写真を掲載していました。写真のほとんどは、プロの写真家や有名モデルを起用した写真ではなく、製品のユーザーたちから寄せられた写真です。一般の人々が撮影した写真は、全てがドラマチックで決定的瞬間な訳ではありませんが、それぞれのフィールドでアウトドアやスポーツを楽しんでいる人でなければ撮ることができない空気感が捉えられ、そこには喜びや楽しさが溢れています。アウトドアやスポーツは決して一部の人だけが楽しむことができるアクティビティではなく、全ての人が楽しみを共有できるものであることを、この写真集は教えてくれます。


427 Sports Advocators’ Library

『世界一のスポーツの伝道者となる』ビジョンを実現するために、ヒマラヤ本社内に設けられたプライベート図書館。世界中から集められたスポーツとスポーツ文化に関する本やグッズを所蔵。非公開。

教えてくれたひと:中島 佑介さん

ブックショップ「POST」、limArt代表。早稲田大学卒。2002年にlimArtをスタート。2011年には出版社という括りで定期的に扱っている本が全て入れ代わるブックショップ「POST」をオープン。恵比寿の店舗では常に入れ替わる本棚に加え、ドイツのSTEIDL社のメインラインナップが常に並ぶオフィシャルブックショップとなっている。 現在はPOSTのディレクターとして、ブックセレクトや展覧会の企画、書籍の出版、その他Dover Street Marketのブックシェルフコーディネートも手がける。 2015年からはTokyo Art Book Fairのディレクターに就任。