ヒマラヤという名前は知っていても、その実際を詳しく語れる人は少ないかもしれませんね。ヒマラヤ、という名前の山があるわけではないんです。7,000mから8,000m級の山々が連なっている山脈をヒマラヤ山脈、と呼んでいるんですね。その中には、8,000mを超える山が14もあります。8,000m級って言われてもピンとこないかもしれませんが、富士山が 3,776mですから、その倍以上の高さの山が14も集まっているということです。さらに、7,000m級の峰も100以上あります。地球上で7,000mを超える山はヒマラヤ山脈以外には存在しません。
地域的には、北面は中国、南面はパキスタン、インド、ネパール、ブータンと五つの国にまたがり、ネパール、ブータンはその国土のほとんどがヒマラヤ山脈に属しています。最も高いのがエベレスト(8,848m)、そしてK2 (8,611m)と続きます。
この山脈が生まれたのは4500万年ほど前と言われ、最高峰でもあるエベレストの山頂付近には4億6000万年前の地層があり、そこから海生生物の化石が発見されています。つまり、世界一高い場所がかつては海の底だった、ということを意味しているんです。
ヒマラヤ、とは古代サンスクリット語で「雪の住処」を表す言葉です。エベレストの名は、この山を初めて観測したジョージ・エベレストというイギリス人である観測隊長の名前からとったもので、現地のチベット語では「大地の母神」という意味を持つ「チョモランマ」という名で呼ばれています。ヒマラヤの峰々は神聖な場所として現地の人々の畏敬の対象であり、登山の前には「プジャ」という儀式を行い、入山の許可と安全を山の神々に祈るんです。
多くの登山家を魅了してやまないヒマラヤですが、14全ての8,000m峰を攻略したのは未だ40人に届きません。今年の10月にはネパール生まれの登山家、ニルマル・プラジャがその全てを189日で登頂するという、登山史上大きな記録を打ち立てました。それまでの最短記録は7年と10ヶ月あまりと言いますから、彼の偉業がどれほど他を圧倒しているかということがわかるかと思います。
エベレストに関していうと、一部で登山の商業化が進み、年間登頂者が800人を大きく超えるようになりました。とは言え、一般の登山者が安易に踏み越えられる領域では無論なく、入念な準備が必要です。一般的に、高度への順応に30日、アタックの天候待ちの予備日などを考えると60日程度が必要になります。
そんなことを聞くと、なかなか縁のない場所と思われてしまうかもしれませんが、実はそうでもなくて、世界中のトレッカーに人気な『エベレスト街道』というトレイルがあります。
標高2,840mのネパールのルクラからスタートするこの街道は、エベレスト山群を望みながら5,540mのカラパタールまで至ります。高地ですので、ゆっくり日数をかけてのトレッキングとなりますが、全て踏破しなくても十分にヒマラヤの秀峰を堪能することができます。
ヒマラヤの山の中で一番美しい山として名前を上げる人も多い アマ・ダブラム(6,856m) はこの街道で見ることができます。また、最初に見えてくる タムセルク(6,623m)も迫力のある山容がとても魅力的な山です。